2022/03/31 11:45
さくら咲く季節となりました。
今年は寒い日が続いたため、桜の開花が遅れるのではないかと言われていましたが、ほぼ例年通りの開花となり、ソメイヨシノ、八重桜などが全国で開花し、街に彩りを添えています。
桜が咲いている情景としてよく見られるのが、川辺やお城のお堀といった水辺が思い起こされますが、同時にその水面に落ちた花びらがいつの間にかまとまって景色を作り出しているのを目にしたことがあると思います。
奈良、平安時代など、いにしえの人々はこういった景色を筏に喩え、「花筏(はないかだ)」と名づけました。水面に落ちた数々の花びらが水の流れによっていつの間にか自然な模様を作り出す。咲き誇る花も美しいが、水面に散り落ちた花びらが作り出す景色も、筏のように連なり、水面に漂う美しいと感じ、和歌や文様などに表現されてきました。
儚く散ってしまう花の余韻を楽しむ模様として「花筏文様」が生まれてきたのです。
この文様は余韻の美学として日本人の感性から生まれた美しい文様として、多くのきものや帯などに数多く使われています。
(文・きもの研究家 石崎 功)