2022/09/22 14:34
いよいよ袷の季節です!
10月は衣更えの季節ですね。
現在の衣更えは明治6年に当時の軍人、役人、警察官などの制服の夏服と冬服の交代時期を決めるべく新暦10月1日から冬服、6月1日から夏服という決まりができました。
それが次第に学校や企業に浸透していったのです。
きものに関してもこの洋装を基準とした衣更えに合わせる形となり、10月1日〜5月31日までが袷(あわせ)、6月は単衣(ひとえ)、7月〜8月は夏物、9月は単衣(ひとえ)という約4回の衣更えが一般的となったのです。
ですが、この洋装に準じた新暦での衣更えは、現在の気候では少々無理があると思いませんか?
5月なのに30℃超えの日があったり、6月中旬や9月は猛暑日が多く、単衣ではとても無理があるような状況ですよね。
そもそも衣更えは平安時代の宮中での決まりごとから始まり、江戸時代の武家社会においてもある程度正式な席での装束選択の基準でした。先に述べたように、明治時代に制度化された衣更えにおいても、軍人、役人、警察官といった公人に対する衣服の選択基準なのです。ですから、そもそも一般の人たちの衣更えには決まりはない訳です。それがいつのまにか、フォーマル基準での考え方に合わせてきっちりと線引きされてしまったのではないでしょうか?
普段着としてのきものであれば、その日の陽気にあわせて、なおかつ余程の季節感の相違がなければ、袷、単衣、夏物の選択はある程度自由であっても良いのではないかと思います。
ちなみに江戸時代までの武家の衣更えは、陰暦の4月1日〜5月4日までが袷(裏地のある着物)、5月5日〜8月31日までが帷子(かたびら)といって主に麻素材の裏地のない着物とされていました。9月1日〜8日までが再び袷(あわせ)、9月9日〜3月31日までが綿入(わたいれ)という表地と裏地の間に綿が入った仕立て方のものを着ていたのです。
ただし、当時の庶民は衣替えするほどの数のきものを持っている人は少なかったので、気候に合わせて少ない手持ちのきものをうまく着回していたようです。
秋の衣更えで袷のきものとなり、存分にきものを楽しめる季節がやってきました。
思い思いのコーディネートで、秋の装いを思う存分楽しんでください。
文・石崎 功(きもの研究家)
「吹寄せの絵図」塩瀬地京友禅染名古屋帯